アルツハイマー型
認知症について
認知症の
原因になる病気
認知症の現れ方は、原因になっている病気(認知症疾患)によって異なります。認知症の原因になる病気として、もっとも多いのがアルツハイマー病です。
※アルツハイマー病が原因になっている認知症をアルツハイマー型認知症と呼びます。
[ 認知症の原因 ]
認知症の基礎疾患の内訳)
平成24年度認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(研究代表者:朝田隆)
アルツハイマー型認知症では、病気の初期から、「少し前の出来事を思い出せない」、「カレンダーを見ても今日の日づけがわからない」といった認知機能障害がみられます。
認知症の原因になる病気があって、認知機能障害が生じ、認知機能障害が原因で生活上の困りごとが生じ、人の助けが必要になった状態を「認知症」と言います。
また、認知機能障害があるが、生活上の困りごとが生じていない状態を「軽度認知障害:MCI」と言います。
アルツハイマー病で
見られる脳の変化
アルツハイマー病の脳は、正常老化の脳と比較すると萎縮しています。
アルツハイマー病の脳の萎縮は、多くの場合「海馬」と呼ばれる記憶をつかさどる部分から始まり、徐々に側頭葉、頭頂葉に広がっていきます。
アルツハイマー病を分子レベルで理解する
アルツハイマー病の脳を顕微鏡で見てみると、「老人斑」が見えます。これが、アルツハイマー病の脳の最大の特徴です。
「老人斑」は、アミロイドβ(ベータ)と呼ばれるたんぱく質が固まってできたものです。
アルツハイマー病の新しい薬は、「アミロイドカスケード仮説」という考え方をもとに開発されました。
アミロイドカスケード仮説:
アミロイドβは正常な脳でもつくられていて、つくられるスピードと分解されるスピードのバランスが保たれています。ところがこのバランスが崩れると、アミロイドβの量が過剰になり、神経細胞の外で徐々に大きなかたまりになっていきます。アミロイドβのかたまりは神経細胞の働きを鈍らせます。やがて神経細胞が死に、神経細胞の数が減ってくると、認知機能障害が現れます。
[ アルツハイマー病の病理 ]
アミロイドβは、症状が出る15~20年前から、ゆっくりと時間をかけてたまっていきます。
アルツハイマー病の新しい薬
「レカネマブ」はどんな薬?
新しい治療薬
『レカネマブ』について
アルツハイマー病の分子的なメカニズムとレカネマブの作用
2023年12月から、アルツハイマー病の新しい薬「レカネマブ」による治療が、日本でも始まりました。
レカネマブは、これまでに日本で承認されている認知症の薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)とは、まったく異なるはたらき(作用機序)をもっています。
作用機序が異なる
従来の認知症治療薬は、神経細胞の間の伝達を調整することによって、今ある症状を和らげる薬でした。
これに対してレカネマブは、アルツハイマー病の原因になっている物質(アミロイドβ)を取り除く作用があります。
[ レカネマブのはたらき ]
レカネマブは、脳内に蓄積したアミロイドβのかたまりにくっついて、アミロイドβを除去します。
レカネマブは、アミロイドβのかたまりを取り除き、アルツハイマー病の進行を抑制することが期待されます。
知っておきたいことは、レカネマブは症状をよくする薬ではなく、また、認知症の進行を完全に止める薬ではないということです。
レカネマブを18か月間投与することによって、認知機能の低下を27%抑制することが示されました。言い換えると、レカネマブを18か月間投与することによって、認知機能低下の進行を5.3か月遅らせたということになります。ですから、レカネマブは軽い症状の期間を引き延ばす薬と考えることができます。
*認知機能障害を図るADAS-cog14という評価では、18ヶ月間の投与で悪化を26%抑制しました。
厚生労働省レカネマブ最適使用推進ガイドライン 東京都健康長寿医療センターレカネマブ(レケンビ®)同意書より抜粋
どんな人が
対象になるの?
対象になるのは、「アルツハイマー病による軽度認知障害:MCI」と「軽度アルツハイマー型認知症」と診断された方で、以下の条件を満たす方です。
- ①ご本人とご家族・介護者が、このレカネマブの副作用について理解した上で、レカネマブによる治療を希望されていること。
- ②レカネマブに対する重篤な過敏症がないこと。
- ③MRI検査で、レカネマブの適応基準を満たすこと。
- ④MRI検査を受けられること。
- ⑤心理検査で、適応基準を満たすこと。
- ⑥アミロイドPET検査、または脳脊髄液検査で、アミロイドβの蓄積が確認されること。
治療前に、
どんな検査をするの?
レカネマブによる治療の対象になるかどうかを判断するために、以下の検査が必要です。
- ①心理検査
- ②認知症の重症度の判定
- ③脳MRI検査
- ④バイオマーカー検査(アミロイドPET検査、または脳脊髄液検査)
病院へは
どのくらい通うの?
レカネマブは点滴で投与する薬で、1回の点滴に1時間15分程度の時間がかかります。
原則として、18か月間、2週間に1回の通院が必要です。
副作用は?
最も多い副作用は、アレルギー反応です。治験では26%の頻度で見られました。
投与後に発熱や関節の痛み、筋肉痛といった症状が出ることがあります。
最も注意が必要な副作用は、脳の微小出血と脳のむくみです。治験では10数%の頻度で認められました。これは脳の血管に溜まっているアミロイドβが除去されるために起こる副作用です。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合などでは、大きな出血が起こって重篤な状態になる危険性があります。
脳のむくみは、軽い場合には症状は出ませんが、ひどくなると頭痛や意識障害、けいれんといった症状を引き起こすことがあります。
レカネマブにはこのような副作用があるため、レカネマブによる治療を始める前には、必ずMRI検査を行って、このような副作用が起きやすい状態ではないことを確認します。そして、治療を開始した後も、ガイドラインで決められたタイミングで、繰り返しMRI検査を行うことが定められています。
どこに相談したら
いいの?
まずはかかりつけ医、または、認知症サポート医、お住いの区市町村の認知症疾患医療センターにご相談ください。
レカネマブによる
治療はどこで
受けられるの?
レカネマブによる治療を提供している医療機関は、東京都の認知症ポータルサイト「とうきょう認知症ナビ」で確認することができます。
とうきょう認知症ナビ※治療を希望される場合は、まず、かかりつけの先生等にご相談ください。
認知症にはやく気づくことに、
さまざまなメリットがあります
- 治療を始めることができ、進行をゆるやかにすることができる場合がある
- 生活の困りごとへの対処法を一緒に考える人に出会える
- これから先のことに備えられる
- 理解して支えてくれる人を増やせる